行政手続法を進めていると、序盤で「審査基準」と「処分基準」という似た名前が出てきます。どちらも行政庁が定める基準なのに、条文の書き方が違っていて、そこがそのまま出題されます。
結論から書くと、違いは片方が義務で、もう片方が努力義務という点です。ただ、そう丸暗記すると主語や場面をすり替えられたときに崩れます。なぜそう分かれているのかまで押さえたほうが、結局は速いと思っています。
先に結論
- 審査基準は「申請に対する処分」、処分基準は「不利益処分」のもの。場面が違う
- 審査基準は設定も公開も義務(行政手続法5条)
- 処分基準は設定も公開も努力義務(同12条)
- 「できる限り具体的に」は、どちらも義務。ここだけ共通している
- 差がつく理由は、国民が自分から動く手続かどうか
運営している2人はどちらも2026年度の受験生で、まだ合格していません。条文はe-Gov法令検索で現物を確認しています。記事中の学習記録は、断りのない限り直野のものです。
そもそも、出てくる場面が違う
混乱の元は、2つを並べて覚えようとするところにあります。この2つはそもそも別の章に置かれていて、対象にしている処分が違います。
| 審査基準 | 処分基準 | |
|---|---|---|
| 対象 | 申請に対する処分 | 不利益処分 |
| 場面 | 国民が「許可がほしい」と申請してくる | 行政庁が「営業停止だ」と処分を打つ |
| 動くのは | 国民の側から | 行政庁の側から |
| 条文 | 行政手続法5条 | 行政手続法12条 |
行政手続法は、条文の並び自体がこの順番になっています。第2章が「申請に対する処分」で、第3章が「不利益処分」。5条が前の章に、12条が後ろの章にあると分かれば、条文番号もそのまま覚えられます。
なお、この2つの言葉の意味は同法2条に定義があります。「申請」は行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの、「不利益処分」は特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分です。
条文の語尾が、そのまま答えになる
ここが本題です。両方の条文を並べて、語尾だけ見てください。
行政手続法 第5条(審査基準)
1 行政庁は、審査基準を定めるものとする。
2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。
行政手続法 第12条(処分の基準)
1 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
5条は「ものとする」「しなければならない」で、12条は「よう努めなければならない」。語尾を見るだけで義務か努力義務かが判別できます。
そしてもう一点、12条2項だけは「しなければならない」で終わっています。
| 審査基準(5条) | 処分基準(12条) | |
|---|---|---|
| 基準を定めること | 義務 | 努力義務 |
| 基準を公にすること | 義務(特別の支障があるときを除く) | 努力義務 |
| できる限り具体的にすること | 義務 | 義務 |
つまり「処分基準はすべて努力義務」は誤りです。定めるかどうかと公にするかどうかは努力義務ですが、いざ定めるのであれば、できる限り具体的にしなければなりません。ここは正誤問題で狙われるところだと思います。
あわせて、5条3項に「行政上特別の支障があるときを除き」という留保が付いている点も押さえておきたいところです。審査基準の公開は義務ですが、無条件の義務ではありません。
なぜ、片方だけ努力義務なのか
ここが分かると、丸暗記から抜けられます。
審査基準が対象にしているのは、国民が自分から申請していく場面です。何をどこまで揃えれば許可が下りるのかが分からないと、そもそも申請書を書けません。基準が非公開なら、国民は手探りで出すことになり、落ちた理由も分からない。だから設定も公開も義務になっています。
一方の処分基準は、行政庁の側から不利益処分を打つ場面です。こちらで基準を細かく公開しすぎると、「ここまでなら処分されない」という線引きが外から見えてしまいます。基準ぎりぎりを狙う行動を招きかねないため、公開まで義務にはしていない、という説明がされます。
1行で覚えるなら
国民が自分から動く手続には、地図を渡さないといけない。行政庁のほうから打つ処分では、手の内をすべて見せる必要まではない。この非対称が、そのまま義務と努力義務の差になっています。
ここは分けて考えています
上の「なぜ」の説明は条文には書かれていません。条文から言えるのは、5条と12条の語尾が違うという事実までです。理由づけは理解のための足場として使っていますが、根拠にはしていません。
確認
設問1
行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておかなければならない。
答え誤り。12条は「公にしておくよう努めなければならない」で、努力義務にとどまる。
※本試験問題をそのまま掲載することはせず、論点を再構成した独自の設問にしています。
設問2
処分基準は努力義務であるから、これを定める場合であっても、その内容を具体的なものとする必要はない。
答え誤り。12条2項は、定めるに当たって「できる限り具体的なものとしなければならない」としている。
設問3
行政庁は、いかなる場合であっても審査基準を公にしておかなければならない。
答え誤り。5条3項は「行政上特別の支障があるときを除き」と留保している。
この論点での、直野の現在地
使っている肢別過去問題集では、審査基準も処分基準も「処分」という節に入っています。50問あって、行政手続法99問のちょうど半分がここです。直野の記録はこうなっています。
| 節 | 問題数 | 重要度 | 実施日 | 理解度 |
|---|---|---|---|---|
| 総則 | 14問 | ★★☆ 重要 | 6/1 → 6/3 → 6/3 | なんとなく |
| 処分 | 50問 | ★★★ 最重要 | 6/5 → 6/7 → 6/10 → 7/2 | 理解した |
| 行政指導・届出・命令等制定 | 30問 | ★★★ 最重要 | 6/11 → 6/15 → 6/16 → 6/20 | 理解した |
| 他の法律との関連 | 5問 | ★☆☆ 標準 | 6/15 → 6/20 → 6/23 | 理解した |
教科書を6月5日に読んで、6月7日・6月10日と回し、そこから3週間空けて7月2日にもう1周しています。最重要に振っている範囲なので、意識して厚めに回した節です。いまは理解度に「理解した」を入れていて、審査基準と処分基準の違いも条文の語尾で判断できる状態になりました。
行政手続法99問のうち85問が「理解した」まで来ています。残っているのは総則14問で、ここは「なんとなく」止まりです。
まとめ
審査基準は申請に対する処分のもの(5条)で、設定も公開も義務。処分基準は不利益処分のもの(12条)で、設定も公開も努力義務です。ただし「できる限り具体的に」だけは両方とも義務なので、「処分基準はすべて努力義務」と覚えると引っかかります。
差がつく理由は、国民が自分から動く手続かどうかです。申請する側には基準が見えていないと動けませんが、行政庁から打つ処分では手の内をすべて開く必要まではない、ということです。
行政法は112点で全体の37%を占めるので、ここを固めないと得点計画が組めません。配点からの逆算は180点をどこで取るかに、学習順は独学ロードマップにまとめています。条文の覚え方そのものは肢別を何周しても忘れるならに書きました。
ご確認ください
本記事は2026年8月時点の学習記録で、行政書士試験の受験生が執筆したものです。有資格者による監修は受けていません。引用した条文はe-Gov法令検索で2026年8月に確認していますが、制度の趣旨に関する説明は筆者の理解であり、正確性を保証するものではありません。掲載した設問は論点を再構成した独自のもので、本試験の出題を示すものではありません。試験の出題範囲・配点・実施要領は変更されることがあるため、受験にあたっては必ず一般財団法人行政書士試験研究センターの当年度の公式発表をご確認ください。本サイトは学習の補助を目的としており、個別の法律相談には応じられません。
