不利益処分の手続に入ると、「聴聞」と「弁明の機会の付与」という2つが出てきます。どちらも処分を打たれる側が言い分を述べる手続なのに、どちらが適用されるかが場面で分かれます。
ここは条文の作りを知っていれば迷いません。行政手続法13条1項は、聴聞になる場合を4つ列挙して、それ以外を全部弁明にしています。つまり覚えるのは聴聞側の4つだけで済みます。
先に結論
- 重い処分=聴聞、それ以外=弁明。条文は聴聞側だけを列挙している
- 聴聞になるのは許認可等の取消し/資格・地位の直接はく奪/役員等の解任命令/行政庁が相当と認めるときの4つ
- この4つに該当しないときが、全部そのまま弁明になる
- 手続の重さも違う。聴聞は口頭が原則、弁明は書面が原則
- そもそも手続が要らない例外が5つある(13条2項)。ここが抜けやすい
運営している2人はどちらも2026年度の受験生で、まだ合格していません。条文はe-Gov法令検索で現物を確認しています。記事中の学習記録は、断りのない限り直野のものです。
条文は「聴聞になる場合」しか書いていない
まず13条1項の構造を見ます。1号が聴聞、2号が弁明です。
行政手続法 第13条第1項(抜粋)
行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、次の各号の区分に従い、(略)当該各号に定める意見陳述のための手続を執らなければならない。
一 次のいずれかに該当するとき → 聴聞
イ 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき。
ロ イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき。
ハ 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき。
ニ イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき。
二 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき → 弁明の機会の付与
2号が「前号イからニまでのいずれにも該当しないとき」と書かれているのがポイントで、弁明のほうには独自の要件がありません。聴聞に当たらなければ、自動的に弁明という作りです。
だから覚える対象は、イ・ロ・ハ・ニの4つだけです。「弁明はどんなときか」という向きで覚えようとすると、条文が定義していない側を追うことになるので、かえって手間が増えます。
イ・ロ・ハに共通しているもの
4つのうちニは「行政庁が相当と認めるとき」なので中身がありません。実質はイ・ロ・ハの3つで、これらには共通点があります。
| 号 | 内容 | 失うもの |
|---|---|---|
| イ | 許認可等の取消し | 持っていた許可そのもの |
| ロ | 資格・地位の直接のはく奪 | 資格や地位そのもの |
| ハ | 役員の解任命令・従業者の解任命令・会員の除名命令 | 人の地位そのもの |
聴聞になるのは「根こそぎ失う」処分
イ・ロ・ハはどれも、持っている資格や地位が丸ごと無くなる類型です。制限されるのではなく、はく奪される。だから慎重な手続として聴聞が要求されます。
逆に、営業停止のように一時的に制限されるだけのものは、ここに当たらないので弁明になります。
ロに「直接に」とあることも見落とせません。結果として資格を失うだけでは足りず、その処分が直接はく奪するものでなければイ・ロには乗りません。
手続の重さも違う
どちらが適用されるかが分かったら、次は中身の差です。
| 聴聞 | 弁明の機会の付与 | |
|---|---|---|
| 対象 | 資格・地位を失う重い処分 | それ以外 |
| 方式 | 口頭(審理の期日に出頭) | 書面(弁明書の提出)が原則 |
| 文書等の閲覧 | 請求できる | 規定がない |
| 主宰者 | いる | いない |
| 参加人 | 認められる | 規定がない |
差が出やすいのは文書等の閲覧です。聴聞には閲覧を求める仕組みがありますが、弁明にはその規定がありません。処分の重さに応じて、防御の道具立ても変えているという整理になります。
そもそも手続が要らない場合が5つある
ここが抜けやすいところです。13条2項に該当すると、聴聞も弁明も要りません。
行政手続法 第13条第2項(要旨)
次のいずれかに該当するときは、前項の規定は、適用しない。
一 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、手続を執ることができないとき
二 資格の不存在・喪失が裁判所の判決書等の客観的な資料により直接証明された場合に、必ずすることとされている処分をしようとするとき
三 法令の技術的な基準の不充足を専らの理由として基準に従うべきことを命ずる処分で、その不充足が計測・実験等の客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき
四 金銭の額の確定・納付命令・給付の制限をしようとするとき
五 義務の内容が著しく軽微なものとして政令で定める処分をしようとするとき
※上記は条文の要旨です。正確な文言はe-Gov法令検索でご確認ください。
並べてみると、5つに筋が通っています。一は時間がない場合、二・三は争う余地がない場合、四は金銭で回復できる場合、五は影響が軽い場合。いずれも「言い分を聴いても結論が動かない、または聴いている余裕がない」ものです。
「必ず意見を聴いてもらえる」は誤り
不利益処分について「手続的に必ず言い分を述べる機会が保障されている」と書くと誤りになります。13条2項に5つの例外がある以上、常に保障されているわけではありません。断定して覚えると、そのまま失点につながります。
確認
設問1
営業の許可を取り消す不利益処分をしようとする場合、行政庁は弁明の機会の付与を行えば足りる。
答え誤り。許認可等の取消しは13条1項1号イに当たるため、聴聞が必要になる。
※本試験問題をそのまま掲載することはせず、論点を再構成した独自の設問にしています。
設問2
弁明の機会の付与を受ける者は、当該処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。
答え誤り。文書等の閲覧を請求できるのは聴聞の手続であり、弁明には同様の規定が置かれていない。
設問3
納付すべき金銭の額を確定する不利益処分をしようとする場合であっても、行政庁は意見陳述のための手続を執らなければならない。
答え誤り。13条2項4号に当たるため、聴聞も弁明も要しない。
この論点での、直野の現在地
聴聞と弁明は、肢別では「処分」の節(50問)に入っています。行政手続法99問の半分がここに集まっていて、重要度も最重要を付けている場所です。
この節は6月5日に教科書を読んで、6月7日・6月10日と回し、3週間空けて7月2日にもう1周しています。最重要に振っている範囲なので、意識的に厚めに回した場所です。
ただ、この節が固まっているからといって行政法全体が仕上がっているわけではありません。641問に理解度を全部付け直したら、かなり偏っていました。
| 理解度 | 問題数 | 割合 |
|---|---|---|
| 理解した | 430問 | 67% |
| なんとなく | 49問 | 8% |
| 曖昧 | 134問 | 21% |
| 未着手 | 28問 | 4% |
問題は、この「曖昧」134問の中身です。そのうち115問が、いちばん最初にやった第1章に集まっていました。
| 章 | 問題数 | 「理解した」に達した数 |
|---|---|---|
| Ch1 行政法の一般的な法理論 | 156問 | 0問 |
| Ch2 行政手続法 | 99問 | 85問 |
| Ch3 行政不服審査法 | 73問 | 70問 |
| Ch4 行政事件訴訟法 | 122問 | 112問 |
| Ch5 国家賠償・損失補償 | 58問 | 58問 |
| Ch6 地方自治法 | 133問 | 105問 |
最初にやった章が、まるごと残っていた
Ch1は6つの節すべてが「理解した」に届いていません。最重要を付けている行政行為62問も「曖昧」のままです。この章をやったのは5月11日から5月28日で、そこから3か月近く一度も触っていません。
逆に行政手続法がここまで来ているのは、6月にやったあと7月2日にもう一度戻っているからです。あとから戻った章は残り、戻らなかった章はそのまま沈んでいました。順番に進めていくと、いちばん最初にやった範囲を最後まで放置してしまう。記録を付けていなければ、この偏りには気づけなかったと思います。
まとめ
13条1項は聴聞になる場合を4つ列挙し、それに当たらないものを全部弁明にしています。だから覚えるのは聴聞側だけで、イ・ロ・ハはどれも資格や地位を根こそぎ失う処分という共通点があります。営業停止のような一時的な制限は、ここに当たらないので弁明です。
手続の中身は、聴聞が口頭で文書等の閲覧あり、弁明は書面が原則で閲覧の規定なし。そして13条2項に該当すれば、そもそもどちらも要りません。
同じ行政手続法の基準まわりは審査基準と処分基準は何が違うかに書きました。行政法全体の位置づけは180点をどこで取るか、学習順は独学ロードマップにまとめています。
ご確認ください
本記事は2026年8月時点の学習記録で、行政書士試験の受験生が執筆したものです。有資格者による監修は受けていません。引用した条文はe-Gov法令検索で2026年8月に確認しています。13条2項については読みやすさのため要旨として示しているので、正確な文言は必ず原文をご確認ください。制度の趣旨に関する説明は筆者の理解であり、正確性を保証するものではありません。掲載した設問は論点を再構成した独自のもので、本試験の出題を示すものではありません。試験の出題範囲・配点・実施要領は変更されることがあるため、受験にあたっては必ず一般財団法人行政書士試験研究センターの当年度の公式発表をご確認ください。本サイトは学習の補助を目的としており、個別の法律相談には応じられません。
