処分に不服があるとき、行政に対して審査請求を出す道と、裁判所に取消訴訟を起こす道があります。ここで詰まりやすいのが「どちらを先にやるのか」で、審査請求を経ないと訴訟に行けないと読んでしまいがちな場所です。
条文はその逆です。原則はどちらを選んでもよく、いきなり訴訟を起こしてかまいません。
先に結論
- 原則は自由に選べる。審査請求ができる場合でも直ちに提訴できる(行訴法8条1項本文)
- 例外は「法律に定めがあるとき」だけ(同ただし書)。これが審査請求前置
- 前置が定められていても、裁決を経ないで提訴できる場合がある(同2項)
- 期間の文言が違う。審査請求は「翌日から起算して3月」、取消訴訟は「知つた日から6箇月」
- 審査請求をした場合、出訴期間は裁決を知った日から数え直す(同14条3項)
運営している2人はどちらも2026年度の受験生で、まだ合格していません。条文はe-Gov法令検索で現物を確認しています。記事中の学習記録は、断りのない限り直野のものです。
原則は「自由に選べる」
根拠は行政事件訴訟法8条です。1項の本文とただし書が、そのまま原則と例外になっています。
行政事件訴訟法 第8条第1項
処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
本文が原則で、これを自由選択主義と呼びます。審査請求ができる場合であっても、それを飛ばして訴訟を起こせます。
ただし書が例外で、こちらが審査請求前置です。ここでも条件は「法律に……定めがあるとき」で、行政不服審査法の再調査の請求や再審査請求と同じ形になっています。個別の法律が特に定めた場合だけ、先に審査請求を通す必要があります。
「法律に定めがあるとき」で揃っている
行政法では、原則を条文本文で示し、例外を「法律に定めがあるとき」に限るという書き方が繰り返し出てきます。再調査の請求(行審法5条1項)、再審査請求(同6条1項)、審査請求前置(行訴法8条1項ただし書)はすべてこの形です。
逆にいえば、問題文に「法律の定めがなくても」と書いてあれば、その時点で怪しいということになります。
前置が定められていても、抜け道がある
ここが抜けやすいところです。8条2項は、前置が定められている場合でも裁決を経ないで提訴できる場合を用意しています。
つまり「前置が定められている=必ず裁決を待たなければならない」ではありません。裁決が長く出ない場合などに、訴訟へ進む道が確保されています。
さらに8条3項では、自由選択で訴訟を起こしたあとに審査請求もされているとき、裁判所が訴訟手続を中止できると定めています。審査請求があった日から3か月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで、という形です。
期間は、条文の文言からして違う
両方を並べると、数字だけでなく書き方そのものが違うことに気づきます。
行政不服審査法 第18条第1項・第2項(抜粋)
処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
処分についての審査請求は、処分があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
行政事件訴訟法 第14条第1項・第2項
取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
| 審査請求(行審法18条) | 取消訴訟(行訴法14条) | |
|---|---|---|
| 知ってから | 3月 | 6箇月 |
| 処分の日から | 1年 | 1年 |
| 条文の書き方 | 「翌日から起算して」 | 「知つた日から」 |
| 正当な理由 | あり | あり |
混ざりやすいのは3月と6箇月で、行政のほうが短く、裁判所のほうが長い、という向きです。
そして1年のほうは両方とも同じです。違うのは主観的な期間だけ、という整理になります。
審査請求をすると、出訴期間は数え直しになる
ここも押さえておきたいところです。
行政事件訴訟法 第14条第3項(抜粋)
処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
審査請求を先にやると、出訴期間の起算点が処分ではなく裁決に移ります。「審査請求をしているうちに6か月を過ぎて訴訟に行けなくなる」ということにはなりません。
あわせて、行政庁が誤って教示した場合も同じ扱いになると条文に明記されています。
確認
設問1
処分について審査請求をすることができる場合、その裁決を経なければ、処分の取消しの訴えを提起することはできない。
答え誤り。行訴法8条1項本文は「直ちに提起することを妨げない」としており、原則は自由選択。前置は法律に定めがある場合の例外にすぎない。
※本試験問題をそのまま掲載することはせず、論点を再構成した独自の設問にしています。
設問2
取消訴訟は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月を経過したときは、提起することができない。
答え誤り。3月は審査請求の期間(行審法18条1項)。取消訴訟は「知つた日から六箇月」(行訴法14条1項)。
設問3
審査請求をした場合であっても、取消訴訟の出訴期間は、処分があったことを知った日から起算される。
答え誤り。14条3項により、裁決があつたことを知つた日から6箇月(裁決の日から1年)に切り替わる。
この論点での、直野の現在地
この論点は2つの章にまたがっていて、肢別では審査請求56問(行政不服審査法)と取消訴訟73問(行政事件訴訟法)に分かれています。合計129問で、行政法641問の2割です。
| 節 | 問題数 | 実施日 | 理解度 |
|---|---|---|---|
| 審査請求 | 56問 | 6/23 → 6/23 → 6/24 → 6/25 → 6/26 | 理解した |
| 取消訴訟 | 73問 | 7/13 → 7/14 → 7/15 → 7/16 → 8/13 | 理解した |
どちらも5回ずつ回している節で、行政法のなかでいちばん厚くやった2つです。取消訴訟は7月13日から16日にかけて4回、そこから1か月近く空けて8月13日にもう1回戻っています。
行政法は全部で24の節に分かれていますが、5回まで回した節は4つだけです。そのうち2つがこの審査請求56問と取消訴訟73問で、残る2つ(審査請求以外の不服申立10問・教示4問)は同じ日にまとめて回した薄い節でした。厚く回した大きい節は、実質この2つです。
まとめ
審査請求と取消訴訟は、原則としてどちらを先に選んでもかまいません(行訴法8条1項本文)。裁決を経る必要があるのは、法律にその定めがある場合だけです。しかもその場合でも、裁決を経ないで提訴できる道が2項に用意されています。
期間は、審査請求が知った日の翌日から起算して3月、取消訴訟が知つた日から6箇月。処分の日からの1年は共通です。そして審査請求を先にやった場合、出訴期間は裁決を知った日から6箇月に切り替わります。
3つの不服申立ての使い分けは審査請求・再調査の請求・再審査請求に書きました。行政法全体の位置づけは180点をどこで取るか、進捗の数字は独学3か月半の記録にまとめています。
ご確認ください
本記事は2026年8月時点の学習記録で、行政書士試験の受験生が執筆したものです。有資格者による監修は受けていません。引用した条文はe-Gov法令検索で2026年8月に確認していますが、読みやすさのため一部を抜粋しています。8条2項の各号の内容など、正確な文言は必ず原文をご確認ください。掲載した設問は論点を再構成した独自のもので、本試験の出題を示すものではありません。試験の出題範囲・配点・実施要領は変更されることがあるため、受験にあたっては必ず一般財団法人行政書士試験研究センターの当年度の公式発表をご確認ください。本サイトは学習の補助を目的としており、個別の法律相談には応じられません。
